Case Study
株式会社いい生活
株式会社いい生活
株式会社いい生活 ウェブ・ソリューション開発グループ サービス基盤システム部 部長 田丸大輔氏
不動産業界にFinTechならぬ「不動産Tech」を持ち込みイノベーションを起こしつつある株式会社いい生活は、既に法人数で約1400社、4000店舗以上の不動産会社にサービスを提供している。インターネットの時代の不動産業務は、契約管理や販売管理だけではない。読者の皆さんもお使いの様々な不動産情報サイトへの情報提供とその管理や、賃貸物件の修繕などに関する入居者とのコミュニケーションなど、非常に多岐にわたっている。いい生活では「ESいい物件One」というブランド下でサービスを提供しているが、その基盤をクラウド化する流れの中で、運用監視業務を省力化し、さらに開発力を強化するDevOpsを実現するためにPagerDutyを採用した。
―本日は取材の機会をいただきどうもありがとうございます。まず、いい生活様の事業について簡単に教えてください。
不動産業界に特化したSaaS型の業務システムを中心に、自社プロダクトの開発・運用を行っております。当社のミッションは人々の生活の根幹である「住まい」に関する市場、不動産の市場を、全ての参加者にとってより満足度の高い市場にする」ということなんですが、そのために、消費者の方々と不動産会社の双方のニーズを満たすサービスを提供しています。提供しているサービスは10種ほどありますが、例えば(入居者アプリ)「pocketpost」という、不動産のオーナー様と住人の方のコミュニケーション用のツールなども提供しています。
―これだけのサービスを提供されているとなると、かなり大きなインフラをお使いなのでしょうね。
はい、元々オンプレミスでシステムを構築していたのですが、仮想マシンを含めて最大で1000を超えるサーバーが稼働していました。加えて、2018年からパブリッククラウドであるAWSへのリロケーションを進めてきており、今期中(2021年3月末まで)には完了させる予定です。
―PagerDutyを導入する前に抱えておられた課題はどんなものだったのでしょうか?
一つはクラウド化と並行して、開発と運用のサイクルをいち早く回すことで競争力を高める、いわゆるDevOps化です。もう一つは、監視の省力化です。
PagerDutyのおかげで全エンジニアがコアビジネスに注力できるようになった、と語る田丸大輔氏
過去オンプレミスのシステムでサービスを提供していたころは、監視はインフラチーム の仕事という傾向で、やはりチーム間の分断がありました。それにいま考えると、アプリケーションの機能追加の時に監視のための社内手続きが都度必要でボトルネックになっていたように思います。ですのでサービスをクラウドに移行するにあたって、ソフトウェア開発者自身が監視をするようにしたらどうかと考えました。
もう一つの監視の省力化について、元々社内に休日夜間含む監視チームを組織していたのですが、PagerDutyを本格導入するのに伴ってチームは解散し、監視を担当していた人たちによりコアビジネスへ参加・注力してもらえるというメリットもあると思いました。
最初はPagerDutyのようにアラートの発生を電話で告知してくれるシステムを自力で作ろうと思った時期もあったのですが、あるイベントでPagerDutyのことを知って、その採用を検討することにしました。
―それはいつ頃のことですか?
最初にDigital StacksさんにPagerDutyのお話をいただいたのが2018年の5月でしたね。6月には小人数での導入を決めました。当時も、自社システムのクラウド化を進めていたのですが、pocketpostの開発チームに、「自分たちの監視に使ってみませんか?」と提案してみたのです。
―社内のみなさんの評価はどうでしたか?
オンコール通知(インシデントの告知)が電話で届くのは予想通り便利で、全く不満はありませんでした。PagerDutyの導入に伴って19年3月には監視チームを解散しました。その後も継続的にライセンス数を増やして利用を拡大し今では30名弱が利用しています。
広尾にある、いい生活本社内の模様。開発チームが詰めるセクションにはやはり液晶ディスプレイがずらっと並ぶ。取材時はコロナの影響でエンジニアの方の多くがリモートワーク中で、出社されている方は少なかった。
―現時点では、どんな監視ツールと一緒にお使いなのでしょうか?
オンプレミスではログ監視にSplunkを、メトリクス監視にはZabbixを、主に使ってきました。それ以外にPrometheusやAmazon CloudWatch、API監視 としてBlazemeter (旧Runscope)等を使っています。GCPも使っていますのでそのオペレーションスイート(旧Stackdriver)も使っていますね。APM(アプリケーション性能監視)にはNew Relicを使い始めています。
現在は1カ月で数十件のインシデントが発生していますが、深刻な問題になることはありませんでした。
―PagerDutyが、いい生活様のビジネスに貢献していることが実感できて大変うれしいです。今後の要望あるいは課題と考えておられることはありますか?
PagerDutyの全機能を使いこなせていない、という点が課題だと思っています。
オンコール通知に絞った使い方をしているので、導入は早かったのですが、ビジネスサービスについてはこれからです。つまり開発・運用担当の人はPagerDutyの恩恵を受けているのですが、ビジネスサイドにいる人々はまだPagerDutyを見ていないのです。その人たちを巻き込むことも考えたいと思っています。その際に、サービスセグメントをどう分けるかを考えるのが悩ましいと感じています。
本社オフィスの一方には、広い休憩スペースも用意されている。なぜか手前には図鑑や絵本も置いてあった。
それと、インシデントの定義を見直そうと考えています。今は単発のイベントでもインシデントとしてオンコール してしまうケースがあるのですが、その全てが緊急対応が必要な訳ではないと推測しています。これを改めたいと思っています。
―どうもありがとうございました。