今日、ほとんどのサポート組織は、何らかの形で従来の階層型サポートモデルを採用しています。これは、エスカレーションと顧客の引き継ぎのプロセスに基づいているものです。このモデルでは、顧客の問題は、サポート階層の複数のレベルを介してエスカレーションされ、3つの階層が一般的なワークフローとなります。
この典型的な3層構造のサポートシステムの例では、Tier 1は入ってくる顧客の問題を受ける最初の防御線であり、一般的なテクニカルサポートを提供します。Tier 1サポートで解決できない問題は、より深い技術的知識とサポートスキルを持つTier 2にエスカレーションされます。このレベルでも解決できない場合は、対象となるアプリケーションの専門家であるTier 3のスペシャリストにエスカレーションされます。
このモデルは、それほど深刻でなく繰り返し発生する問題には有効ですが、今日の常時接続のデジタル世界において、優先度が高く重要なインシデントに対処する場合には、全く適していません。おそらく、今日のカスタマーサービス組織で広く見られるこの従来のサポートモデルの考え方を疑うべき時が来ているのでしょう。
このモデルは、エスカレーションと顧客の引き継ぎのプロセスに基づいているため、以下のようないくつかの欠点があることは驚くことではありません。
- 解決までの時間、First Reply Timeが長い。 全チケットが同じトリアージのキューに従うため、最終的に適切な担当者にたどり着くまでは、その問題に対処する能力がないエージェントのもとで時間を浪費することになります。このモデルでは、適切な専門家にたどり着くまでに障壁があり、問題についての重要な文脈や情報が途中で失われることが多く、不必要な遅延が発生します。
- 長いバックログ項目。 Tier 1レベルで解決できないお客様の問題は、他のサポート層への待ち行列に入ります。このケースは、リアルタイムでアクティブに作業されている状態から、バックログのアイテムになるのです
- アカウンタビリティーの低下。 階層化モデルは、エスカレーションと顧客対応のプロセスに基づいています。最前線のスタッフが問題を専門家にエスカレーションすることを求められると、アカウンタビリティーが低下し、インシデントからエンドツーエンドで学ぶ機会も減少します。
- 顧客にネガティブな体験をさせる。 複数のサポート担当者に問いを繰り返さなければならなかった経験のある人なら誰でも、このことが顧客満足度にマイナスの影響を与えると理解してるはずです。
これは、サポート組織は階層型サポートモデルを廃止すべきである、と言っているのではありません。階層型サポートは、それほど深刻でない問題や単発の質問に対応するには非常に効果的です。しかし、重要で緊急性の高いインシデントになると、階層型モデル特有の非効率性が、最終的に顧客離れにつながる負の顧客体験をもたらす可能性があります。
IIntelligent Swarming℠は、オーソドックスな階層型サポートに代わるフレームワークを提供します。このフレームワークでは、キュー内の作業よりもリアルタイムの作業、サイロ内の作業よりもコラボレーション、一方的なエスカレーションよりもケースのオーナーシップを優先します。
インテリジェントスウォーミングモデルでは、チケットを受け取ったカスタマーサービス担当者が、その案件を最後まで担当します。サポートに階層はなく、お客様の引き継ぎもありません。チケットの所有者であるエージェントが解決できない場合、そのエージェントは即座に問題の「スウォーム」化を行う専門家チームを引き込みます。このような的を絞ったアプローチはインテリジェントスウォーミングと呼ばれ、適切な人が適切なタイミングで動員され、協調した対応を行います。これは、多くの人が対応策に参加しても、必ずしも問題解決に適した専門家であるとは限らないという、インシデントに対する協調性のないスウォーミングとは対照的なものです。インテリジェントスウォーミングのフレームワークでは、ケースオーナーが専門家チームと情報を共有し、解決に向けて協力し合います。
このモデルには、いくつかの利点があります。
この理論を実践するためには、カスタマーサービス担当者が適切な情報にアクセスし、専門家と協働できるようにする必要があります。つまり、組織全体からリアルタイムのサービス障害データを提供してもらうことです。また、運用チームとの双方向のコミュニケーションを可能にする双方向通信チャネルを確立することも必要です。また、機械学習機能を使って、顧客に影響を与える前にインシデントを特定することも可能です。
PagerDutyでは、サポートエージェントがインシデントの履歴コンテキストを可視化し、テクニカルリソースからの監視データを提供することで、問題の全体像を把握し、正しい解決策を特定できます。エージェントがチケットで助けを必要とする時は、PagerDutyの一連の機能を使って迅速に追加支援を引き出すことで、スウォーミングモデルをさまざまな方法で実現できます。
エージェントは、インシデントにレスポンダーを追加することで(「Add responders」という分かりやすい名前の機能があります)、PagerDutyで迅速にスウォームリクエストを始められます。これにより、組織全体から必要な専門家が直ちにループに入れられ、コラボレーションのための会議ブリッジを設定するオプションも用意されています。追加されたレスポンダーは、緊急性の高い通知ルールで通知され、重要な問題を見逃すことがないようにします。
PagerDutyのエージェントは、レスポンスプレイ(ボタンをクリックするだけでインシデントに対して実行できる定義済みアクションのセット)を利用して、スウォームの開始に関連する定番のワークフローを自動化することもできます。これらの定義済みアクションには、対応者の追加、カンファレンスブリッジの設定、関係者のインシデントへのサブスクライブ、ステータスアップデートの公開などが含まれます。レスポンスプレイは、特定のサービスに結びついたインシデントに対して自動的に実行されたり、PagerDutyを使っている誰もが手動で開始したりでき、実行されるアクションが問題の規模に適していることを確認できます。
最後に、PagerDutyはZendeskなどのチケットツールやSlackなどのChatOpsツールとネイティブに統合されているため、エンジニアリングチームと簡単に双方向のコミュニケーションが可能です。また、エージェントが使っているツールからPagerDutyのインシデントをトリガーできるため、コンテキストスイッチの必要がなく、適切なチームや専門家にすぐに接続して問題を解決できます。PagerDutyをオールインワンの対応オーケストレーションおよびコラボレーションツールとして使用することで、チームは簡単に問題をスウォーミングし、顧客とエージェントの両方にとってよりシンプルで合理的なエクスペリエンスを実現できます。
スウォーミングや階層型プラクティスを使用するかどうかにかかわらず、今日、あらゆる顧客問題をサポートするためのよく知られたアプローチが存在します。適切なスウォーミングの手法を事前に構築しておけば、適切なタイミングで適切な専門知識を自動的に活用できます。また、即時対応が必要でない重要度の低い問題については、階層化されたアプローチを自動化(自動エスカレーションポリシーやオンコール通知など)することです。
デジタルイノベーションとユーザーエクスペリエンスによって定義されるようになるパンデミック後の世界では、カスタマーサービス機能を強化する新しい方法を検討する時期が来ています。
- Intelligent Swarming℠は、サービスイノベーションコンソーシアム™のサービスマークです。
この記事はPagerDuty社のウェブサイトで公開されているものをDigital Stacksが日本語に訳したものです。無断複製を禁じます。原文はこちらです。